「小千谷ちぢみ」と同じ品質で、さらに不可能とされていた
"ちぢみに友禅を染める"事を可能にした。
近江本麻ちぢみと原料について
※写真は原料の麻(苧麻)
滋賀県湖東地域は琵琶湖を中心に豊富な水資源があり麻織物に適した土地で、降るから麻織物の産地として発展して来ました。この近江本麻ちぢみに使われている麻は洋装などに使われるリネンとは違い、古くから日本で和装用に使用されているラミー(苧麻)を使用し、リネンよりも柔らかく光沢を持ち、強度も高く、日本の湿気が多い夏にぴったりと言えるのが特徴です。近江本麻ちぢみは横糸に撚りをかけて織り上ることより、独特のシボ感が生まれ、その後揉みこむことにより表現されます。また、麻糸を天然の「こんにゃく糊」で撚りをかける事により、肌に優しく、ご家庭でも簡単に洗う事ができ、様々な用途に使用されてきました。
なぜ近江本麻ちぢみなのか?
紫織庵は白生地屋としての歴史は1662年から始まっており、小泉家から正式に白生地部門の暖簾を引き継ぎ、合計で約350年たっております。その経験から、全国の呉服に関する生地情報には自信がありました。
そこである日お客様から「小千谷ちぢみ」に紫織庵の柄を染めてみたい!
と言われたのが事の発端で、当時の技術では染める事が可能でしたが、紫織庵の型友禅で染めてしまうと、生地が硬く色が綺麗にのりませんでした。しかも、染め用の白生地はとても生産数が少なく、高価になってしまう問題がありました。それを解決すべく長年の経験をいかして、先代が滋賀出身ということもあり、紫織庵の型友禅が染められる近江本麻ちぢみを開発する事になりました。
※左はこんにゃく糊、右は原材料のこんにゃく
ちぢみは織る前に必ず糸に糊をつけなくてはいけないのですが、普通のちぢみだと「米糊」「普通糊」の2つを使用します。これらは水溶性なので洗っているとシボが取れやすい傾向にあります。
そこで近江本麻ちぢみや小千谷ちぢみは非水溶性の天然のこんにゃく糊をつけることによって、洗ってもシボがとれなく、長持ちします。もちろん糸、一本一本につけます。余談ですが、このこんにゃくは食べられるくらい良いものを使っています。
※左は糊付け後の糸を一つに。右は一つになったものを生地にしていく
※出来上がった生地を揉み込み、シボを出す。
この揉み込み作業が近江本麻ちぢみの特徴であり、揉み込むと撚糸による作用でシボが定着します。定着すると肌にべとつかず、汗を吸っても乾燥が早くさらさらの味わいをつくりだすことができます。このシボこそが夏のちぢみの心地よさを演出してくれます。
友禅染めへの挑戦
ちぢみを染めるのは普通、「無地染め」「先染め」の2種類しかありませんでた。上の画像が無地染めの例です。何とかしてこの生地に友禅を染めたく、とある工業組合の協力の元、2015年にようやく、ちぢみ自体に染色することができました。この時は普通糊を使用していました。普通糊の時も出来が良く評判はよかったのですが、普通糊だと使用していくたびに糊が落ちシボ感が減ってしまうため、非水溶性のこんにゃく糊を使いつつ、友禅を染める必要がありました。
そして2016年についに、こんにゃく糊を使い、伝統的な糊友禅染めをすることに成功しました。全世界でも手捺染の型友禅では紫織庵だけです。各工程は企業秘密でありお見せすることはできませんが、近江本麻ちぢみ独特のシャリ感と爽やかな清涼感を再現し、手触りは小千谷ちぢみより柔らかく、夏場動きやすいと評判です。